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第8回 ウーマンズカフェ 熊本こども・女性支援ネット

SDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」のためには、どのような取り組みが必要でしょうか。「熊本こども・女性支援ネット(KCW)」(熊本市)は2016年に設立された民間団体。子どもと女性の権利を保障できる社会を目指してさまざまな活動をしています。今年9月からは、リラックスした雰囲気の中、女性一人一人の悩みなどを聞く「ウーマンズカフェ」というユニークなイベントに取り組んでいます。

 

一人一人と語り合い 女性を支援

 11月4日、KCWによるイベント「ウーマンズカフェ」が自立支援施設「100年ボンドファーム」(熊本市西区)で開かれました。会場には①自分自身と対話できるビジョンマップづくり②アロマオイルを使ったハンドトリートメントを受けられるブース③自分の心情や大切なことを整理するワークショップ|などのブースが設けられ、スタッフらが訪れた女性とコミュニケーションを取りながら、素直な胸の内に耳を傾けていました。

 同イベントは熊本市の「女性のつながりサポート事業」の一つで、KCWが受託し、9月から始まりました。この日は9回目で、来年2月までに計24回の開催を予定。同施設の他に「オモケンパーク」(中央区)、「グランモッコビレッジ」(東区)、「こどもキッチン ブルービー」(南区)も会場になっています。4会場とも月1回のペースで開催中で、熊本市在住か同市に通勤・通学している10代以上の女性が対象です。

「オモケンパーク」(中央区)で11月8日に開催された「ウーマンズカフェ」の様子。右がKCW共同代表の清水さん

 

安心できる場づくり

 KCW共同代表の清水菜保子さん(50)が、同イベントの必要性を感じたのは、女性たちの多様なニーズに沿ったサポートが足りていないのでは、と考えたからでした。「女性支援といっても、年齢や仕事、家族関係、健康状態などライフステージによって一人一人違う。悩みや困り事も変化しますが、その多様さに支援や制度がまだまだ追いついていないと感じます」と指摘。「ウーマンズカフェ」の参加者の話を聞き、よりきめ細かなサポートには、一人一人の声を聞くことが必要で、そのための対等で安心できる場づくりの大切さを改めて痛感しているといいます。

 また、全ての人が支援やアドバイスを求めているわけではなく、話を聞くだけで不安が解消され、気持ちが前向きになる人が多いことにも気付いたそうです。

 KCWは他にも10代以上の熊本市在住の女性を対象にアンケートを取ったり、悩んでいる女性の話を聞くオンライン方式の無料相談サービス「ウーマンズ ダイアローグ」を開いたりもしています。「女性が不安や悩みを気軽に話せる場、人や地域とつながる場を目指したい。職場や家庭以外の自分自身に戻れる場をつくり、さまざまな女性たちの声を聞くことはジェンダー平等にきっとつながるはず」と共同代表の園田敬子さん(61)は話します。

 ウーマンズカフェに参加した40代の女性は、「日頃、もやもやした気持ちを抱いていたので、自分が何に対して不満を持っているのかをはっきりさせたいと思い参加しました。話をしたり、ワークショップを体験したりして気持ちがすっきりしました」とにっこり。同じく40代の女性は「自分の内面と向き合う時間をゆっくり取ることができました」と穏やかな表情で話してくれました。

 

“最初の一歩”支援

 男女共同参画の推進と市民文化の振興を目的に設置された施設「熊本市男女共同参画センターはあもにい」(中央区)の館長・吉田稀世さん(50)は、「何か一つのことを解決するだけではジェンダー平等を実現したとは言えません」と強調します。

「ビジョンマップ」のワークショップでは、自分の好きなもの、心に響くものを雑誌などで見つけて切り貼りすることで、自分を励ましてくれる作品に仕上がります

 ジェンダー不平等は、働き方や生き方、健康、福祉、教育、政治参画、地域創生などさまざまな分野の社会課題とつながっているからです。また、吉田さんは悩みを持つ女性に対し、「日々の暮らしに不安を抱えた状態では、先のことまで考えるのは難しいものです。まずは自分を大切に、日々の暮らしを落ち着かせることから取り組めるよう、KCWのような“最初の一歩”をサポートする団体に相談したり、女性支援や居場所づくりに取り組む市民団体の情報も得てほしい」とアドバイスします。


ココがポイント!

日本のジェンダーギャップ指数過去最低

 各国の男女格差を「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で評価し、国ごとのジェンダー平等の達成度を示したものがジェンダーギャップ指数です。2023年版によると、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、過去最低でした。とりわけ、「政治」分野が138位、「経済」が123位と世界でも最下位クラスであることが大きな課題となっており、SDGsの達成度にも影響を及ぼしています。

 KCWの活動は、当事者に寄り添い、当事者が自らの課題を解決できるようにサポートする支援です。「一人一人の声を聞くこと」は、SDGsの基本理念「誰ひとり取り残さない」にも通じており、今後の活動の広がりに期待しています。

 

 

 

 

 

熊本大学大学院 教育学研究科

教授 宮瀬 美津子さん

NPO法人くまもと未来ネット理事