SDGs朝刊特集 掲載記事アーカイブ

第12回 総括

持続性のある文化、産業培われる

SDGsが際立たせた「熊本らしさ」

 これまでに取り上げたテーマは多岐にわたります。

 ①途上国との公正な貿易を推進するフェアトレード ②環境負荷を軽減するだけでなく、交通弱者の生活も支える公共交通機関 ③八代地域の経済と景観、暮らしを守り続けてきたイ草 ④豊かな海・水の象徴である有明海の干潟と江津湖 ⑤ジェンダー平等を目指す熊本の教育 ⑥公害を教訓にした水俣の環境保全活動-などです。さらに、SDGsの先進的な取り組みを顕彰する「くまもとSDGsアワード2022」の上位入賞7団体を紹介して、熊本にはSDGsにつながる数多くのテーマがあることを伝えました。

 

「SDGs視点で熊本を再発見!」の紙面

 

「資源生かした取り組み」顕著

 SDGsは2015年に国連で決定された国際社会全体の目標です。世界が抱える課題に対しての目標であるためスケールが大きく、「自分ごととしてイメージしづらい」という側面もあります。そこで、本連載では世界ではなく熊本に焦点を当てました。その結果、「SDGs」という言葉が普及する以前から、自然や文化が人々の営みと共に守られ進化してきたことが見えてきました。

 本連載のアドバイザーを務めるEPO九州の澤克彦さんは紹介した事例に関連するSDGsのゴールを分析。最も多く登場したのは11「住み続けられるまちづくりを」で、次いで9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、12「つくる責任つかう責任」、13「気候変動に具体的な対策を」、15「陸の豊かさも守ろう」が同数で並ぶ結果でした。

 「熊本の豊かな自然環境を土台にした持続可能な暮らし、産業、環境保全を目指す取り組みが目立ちました。これらは今に始まったことではなく、昔から熊本ならではの地域資源と人の営みによって持続性のある文化となりわいが培われてきました。私たちは今もその土壌の上に暮らしており、同時に次の時代へとつないでいる(持続させている)ところなのです」と澤さん。

 続けて「本プロジェクトに賛同する多くのスポンサー企業に応援してもらったことにも意味があります。SDGsが重視する『パートナーシップ』を実践する場として、企業も一緒に成長していくプロジェクトになるからです」と振り返ります。

 

編集後記

 連載を通して、次代に残したい地域資源や文化が見えてきた一方で、「私には何ができるのか」と考えさせられることもありました。SDGsは2030年までの達成を目指しています。残された期間はあと7年。「ボランティアへの参加」「ごみを減らす」。こうした個人の積み重ねも大切ですが、これからは、さらに一歩踏み込んだ行動が必要だと感じます。

 来月からの連載では、学生や市民団体など暮らしやすい社会づくりに励む人々の姿をお伝えします。「1人では難しくても、誰かと力を合わせれば、一市民でもできることがある」。SDGsをより身近に感じてもらえる紙面を目指します。

( 熊日 編成部 井上さくら )

 

これまでの掲載テーマとゴール

vol.1 プロローグ

vol.2 フェアトレードタウン:アジア初のフェアトレードタウン「熊本市」の今

ゴール番号 1.12.16

vol.3 地域公共交通:環境負荷を軽減-交通弱者の生活を支える公共交通機関

ゴール番号 3.11.13

vol.4 イ草と畳のある暮らし:地域の経済、景観、文化を育む「緑の宝」

ゴール番号 8.9.15.17

vol.5 有明海の干潟の恵み:海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する取り組み

ゴール番号 9.13.14

vol.6 江津湖の魅力:市民の財産。都市型自然環境として親しまれる湧水湖

ゴール番号 6.11.15

vol.7 日本初の「男女共学」熊本洋学校:ジェンダー平等の道を切り開いてきた熊本の教育

ゴール番号 4.5.10

vol.8 水俣に学ぶ:国内外から注目される水俣の環境保全の取り組み

ゴール番号 4.12.17

vol.9 脱炭素社会への取り組み:地域脱炭素へ向け、市町村の枠を超えて連携

ゴール番号 9.11.13

vol.10 「くまもとSDGsアワード2022」上位入賞団体紹介

vol.11 草原を生かす:積極的な利用で守る阿蘇の草原

ゴール番号 11.12.15


ココがポイント!

くまにちSDGs アクションプロジェクト

アドバイザー 澤 克彦さん

 

EPO九州(九州地方環境パートナーシップオフィス)

コーディネーター

1975年生まれ、熊本市出身、熊本県立大大学院修了、

環境教育NPOなどを経て現職。