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第12回 シェアサイクルサービス 熊本市

 熊本市と民間事業者は2年前、シェアサイクルサービス「チャリチャリ」の実証実験をスタートしました。中心市街地に設置されたポート(駐輪場)に配置された自転車を、アプリを使っていつでもレンタルできるサービスです。利用者は徐々に増加しており、4月1日からの本格導入が決定しました。チャリチャリの主な利点は①利用者の健康づくりに貢献②脱炭素の推進③渋滞の緩和│で、SDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」やゴール13「気候変動に具体的な対策を」などにつながると期待されています。

 

健康推進、脱炭素 ・・・ チャリチャリ快走

 3月7日、熊本市役所の南側にあるチャリチャリの「Spring熊本花畑町ポート」には、赤い車体のシェアサイクルが10台以上並んでいました。近くに職場があるという尾上典史さん(40代/中央区在住)は、「営業で訪問する会社が少し遠い場所だったり、手荷物があったりする時はよく利用しています」と話します。自家用車を持っていないため、プライベートでも愛用しているそうで、自宅近くのポートからチャリチャリを借りてスーパーへ買い物に行くこともあります。「アプリで操作でき、どこにポートがあるか、そのポートに利用できる自転車があるかも簡単に確認できるので便利」と教えてくれました。

 チャリチャリは、24時間いつでも自転車をレンタルできるサービスで、熊本市とシェアサイクル事業者  ニュート  「neuet」(福岡)による共同事業です。利用手続きや料金決済はスマートフォンで完結でき、どのポートでも自転車を返却できる利便性の高さも魅力。料金は1分ごとに税込み6円、電動アシスト付き自転車は税込み15円(4月1日から1分7円、電動アシスト付き自転車は1分17円)です。

 

1月1日から31日までの期間、最も利用数が多かった「花畑広場ポート」。買い物客らが次々と利用している

 

利用者は10倍超に増加

 熊本市がチャリチャリの実証実験を始めたのは2022年4月。目的は①中心市街地の回遊性の向上や自家用車から公共交通機関への移動の転換②駅や電停、バス停から目的地へのラストワンマイル(最後の区間)の移動手段の充実でした。当初のエリアは、熊本駅と中心市街地周辺の6.3平方㌔㍍で、普通自転車100台、電動アシスト付き自転車10台、ポート42カ所でスタートしました。その後、規模を順次拡大。今年1月末時点で、北は崇城大学や熊本電鉄北熊本駅、東はJR竜田口駅や県庁を含む31平方㌔㍍で展開中。普通自転車は590台、電動アシスト付き自転車は510台、ポート数は299カ所にまで増えています。

 規模の拡大に伴い、利用者も増加しています。一昨年5月は1日の平均利用者数110人(平均利用回数166回)でしたが、今年1月は1625人(同2222回)と、導入当初の10倍超になっています。熊本市自転車利用推進課長の酒井伸二さん(53)は、「利用者が増えている要因は、使い勝手の良さが向上しているからだと思います。スマホだけで完結できる点はもちろんですが、ポート数が増えたことで、より近い場所で借り、目的地のより近い場所まで自転車で移動できるようになりました」と話します。

 マンションの管理会社から「ポートを設置したい」という要望も増えています。入居者にチャリチャリを利用してもらうことで駐輪場スペースを縮小できるからです。利用者が増えるとポート設置の要望が増えるという好循環が生まれています。

 

チャリチャリは車体にある二次元コードをスマートフォンで読み取り解錠します

 

郊外での利用も可能に

 中心市街地の回遊性の向上を目的にスタートしたシェアサイクルサービスですが、当初から渋滞解消や脱炭素につながるという面も注目されていました。「導入当初の規模では効果は小さなものでしたが、今では脱炭素や渋滞解消の確かな一助になりつつあります」と酒井さん。4月1日から本格導入が決まり、エリアはさらに拡大する予定で、今後は郊外のバス停やその近くの住宅街にポートを設置することでサイクル&ライドを推進していきたいと考えているそうです。


ココがポイント!

所有から共有へ考え方をアップデート

 SDGsではさまざまな社会的なサービスを人々が平易に利用できる状態を「アクセス」という考え方で捉え、重要視しています。シェアサイクルは、個人的な自転車利用にとどまらず公共交通の一翼を担う地域の共有サービスとして定着することで、私たちの「移動の自由」をさらに発展させています。

 中心市街地の自動車利用が低減されることにより、排気ガスや渋滞の課題にも同時にアプローチするなど一石三鳥の取り組みと言えます。

 こうしたサービスの維持と持続のためにも、一人一人が交通利用に対する考え方を「所有」から「共有」へアップデートすることが大切です。

 

 

くまにちSDGs アクションプロジェクト

アドバイザー 澤 克彦さん

EPO九州

(九州地方環境パートナーシップオフィス)