九州ルーテル学院インターナショナルスクール小学部(熊本市中央区)は、2024年春に開校した新しい学校です。台湾積体電路製造(TSMC)や関連企業の県内進出に伴って地域の国際化が進む中、受け皿づくりの一環として開設。英語教育と多様性、自ら学ぶ「探究」の授業を通した教育は、SDGsのゴール4「質の高い教育をみんなに」、10「人や国の不平等をなくそう」などにつながっています。授業カリキュラムの各項目をSDGsに関連させる取り組みも進めていて、学校運営の指標になっています。
9月9日、1年生の児童たちは英語の授業を受けていました。担任のローズ・ディマル先生が、取り囲むように座った児童に「bl」で始まる単語を尋ね、児童は「black(黒)」「blue(青)」「blanket(ブランケット)」などと次々に答えていきます。授業中のやりとりは全て英語。児童同士も同様です。
国語などを除き算数や理科も英語で授業が進みます。上妻薫校長は「子どもたちは、場面に応じて英語と日本語を上手に使い分けていて、柔軟性の高さに驚かされます」と笑顔で話します。

1年生の英語授業。担任のローズ・ディマル先生がテンポよく進めていく=9月9日、熊本市中央区
定員数は各学年20人の計120人。現在は新入学で入ってきた1、2年生各18人と、転入してきた3-6年生計22人を合わせた58人が通学中です。外国籍の15人に加えて外国にルーツを持つ児童4人が在籍しています。
時間割を見ると、毎日の英語に加え、「探究」という授業が目に入ります。児童が関心を持った内容を自ら調べ、解決策を見いだす内容です。教科の枠を超え、同級生や教員らと協力しながら取り組んでいます。
同校が「国際バカロレア」の初等教育プログラム(PYP)候補校になっていることも、探究型教育に取り組む大きな理由です。
国際バカロレア教育は、グローバルな視野を持ち、思考力・探究心・コミュニケーション力を持つ人材を育むことを目的に、国際バカロレア機構(本部スイス・ジュネーブ)が提供する国際的教育プログラムです。年代ごとのプログラムの中でも、PYPでは探究型教育に重点が置かれていて、同校では国の学習指導要領に準拠しながら取り入れています。
早ければ来年度に認定校となる見込みです。上妻校長は「国際標準に合致した教育内容を保証することができます」と話します。
国際バカロレアと並んで、学校運営の指標となっているのがSDGsです。各学年の授業内容は、それがどのゴールに結び付くのかを考えて構成してあります。
6年生では卒業前の3月に、エキシビションと呼ばれる発表会が開かれます。児童が「探究」で取り組んだ内容を報告するのですが、必ずSDGsと関連するよう工夫されています。ある児童が気候変動について調べたノートには「地球温暖化を防がないと人や多くの生き物が失われてしまう」という内容が英語で書かれていて、ゴール13「気候変動に具体的な対策を」のアイコンが描かれていました。
SDGsが国連で採択されて今月で10年。現在の小学生は、小さな時からSDGsに触れているいわば「SDGsネイティブ世代」です。上妻校長は「児童たちは意識せずともSDGsの理念が身に付いているのかもしれない」と言います。
国際バカロレアとSDGsという二つの国際的指標に基づいた同校の取り組み。新入生が全学年でそろう4年後に向け「熊本と世界をつなぐ架け橋となり、地域に信頼される学校になることを目指しています」と上妻校長は話しています。

6年生の「探求」課題ノート。SDGsのゴールに沿った内容が英語で書き込まれている

くまにちSDGs アクションプロジェクト
アドバイザー 澤 克彦さん
EPO九州
(九州地方環境パートナーシップオフィス)
半導体関連産業の進出に伴い、熊本ならではの教育基盤づくりが求められています。同校の地域に根差した探究型教育は、SDGsのゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」につながる国際水準の人材育成とともに、ゴール4や10にもつながっています。同校がグローバルリーダー育成の開拓者となり、熊本とアジア・世界をつなぐネットワークのハブとなることが期待されます。