株式会社再春館製薬所は、化粧品や医薬品を製造販売するメーカー企業です。発売開始から50年を超えるロングセラーの基礎化粧品「ドモホルンリンクル」など、独自に研究開発した製品を自社で一貫して販売、発送することで、顧客一人一人に寄り添った対応を可能にしています。また、自然と共生する会社づくりや地域づくりにも熱心に取り組んでいます。
再春館製薬所の新入社員にとって、制服は特別なものでした。入社後すぐに支給されるのではなく、顧客対応をする上で必要な研修を、全てクリアできて初めて手にするため、一人一人に思い入れがあるものです。しかし、新型コロナ感染症対策として更衣室で密になることを避けるため、2022年にスマートカジュアルが導入され、式典時や来客対応時を除いて制服を着用する機会が激減。この状況に社員たちから「役目を終えた制服をただ廃棄するのではなく、何かに再利用することはできないだろうか」と提案がありました。
同社では「自然の力を人の力に生かす漢方の製薬会社である」との思いから、自然に負担をかけない製品開発に努めてきました。太陽光発電や省エネ化、リサイクル活動など、自然との共生に向けたさまざまな取り組みを進めており、SDGs活動に自発的に関与する組織風土が醸成されています。社員が制服の再利用に向けて興味を持ち、行動を起こすことは、ごく自然な流れでした。

男性社員が協力して、約100袋分の制服をトラックに積み込み運搬しました


制服は切断、破砕、反毛(はんもう)、フェルト加工などを施し再資源化されます

制服リサイクルを中心となって進めた木村美奈子さん(左)、緒方玲香さん(右)。社内でも大きな反響があったと話します
2023年、社員満足室の木村美奈子さん、緒方玲香さんを中心に制服リサイクルプロジェクトが始動しました。まず、リサイクル方法について調査をしたところ、回収した制服からポリエステルの糸を作るケミカルリサイクルと、そのまま破砕して再利用するマテリアルリサイクルがあることが分かりました。そこでCO²の排出量とコストを比較し、マテリアルリサイクルとして制服を再利用することにしました。
全社員に呼び掛けて集まった制服は、リサイクルできない部分の分別を一着ずつ手作業で行い、906㌔㌘もの量が回収されました。その後、自社トラックで北九州市の業者まで運び、再資源化のための処理工程も見学しました。制服は切断、圧縮を経て繊維化され、自動車の防音材として再び社会で活用されることとなります。今回のリサイクルでは、焼却した場合と比べCO²の排出量を92%も削減できました。

電気自動車の普及にともない、防音材の需要は高まっています
今回の取り組みについて、木村さんは「衣類の回収・分別作業は想像以上に大変でしたが、普段のごみの分別の必要性も改めて認識しました。資源の循環の一助となれてうれしい」と振り返ります。緒方さんは「リサイクルの様子を実際に目にして、10年前に制服を受け取った日のことを思い出しました。不要になった物が違う形になっていくのを見て、今後も環境への取り組みに積極的に目を向けていきたい」と語ります。再春館製薬所が目指すのは、事業を通じて環境を循環させ、人々の幸せを循環させること。地球のよりよい未来のためにできることを考え、事業に取り組み続けています。