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第2回 フェアトレードタウン

SDGs視点で熊本を再発見!

 フェアトレードとは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で購入することで、生産者や労働者の生活改善と自立を目指す貿易の仕組みです。近年は「SDGsの象徴」とも呼ばれ、さらに注目を集めています。熊本市は2011年、市民と協力して推進する都市「フェアトレードタウン」にアジアで初めて認定されました。

 

途上国との公正な貿易推進

 熊本市中央区新屋敷の住宅街の一角にあるコンテナを利用したショップ。店内には海外から仕入れた衣類や雑貨、チョコレート、コーヒー豆などが並びます。「フェアトレードシティくまもと推進委員会」代表の明石祥子さん(64)が、1993年に開いたフェアトレード専門店「ラブランド」です。

 

「フェアトレードシティくまもと推進委員会」代表の明石祥子さん。「ラブランド」は2016年の熊本地震で全壊。その後リフォームしたが、火災で全焼。現在はコンテナで不定期営業です

 

 明石さんは、同市のフェアトレードタウン認定に大きく貢献し、今も普及活動をするキーパーソン。明石さんによると、フェアトレードは貧困と環境問題の解決を目的に、ヨーロッパで始まりました。「『SDGsの象徴』と呼ばれるのは、生産者の生活、消費者の安心、豊かな環境を守ることに貢献し、SDGsが掲げる目標の多くにつながるからです」と話します。

 例えば、明石さんの店で取り扱う衣類の原料は、環境や着る人に配慮し無農薬で栽培。手染め、手織りで仕上げられています。防腐剤や凝固剤を使わずカカオを72時間練り上げて作るチョコレートや、森の生態系を守ることにつながる森林栽培のコーヒー豆などもあります。これらを適正な価格で購入することで、生産者の暮らしや現地の文化、環境を守ることに貢献できるのです。

 

「ラブランド」の店内。フェアトレード商品がずらりと並びます

店内で販売しているチョコレート(手前)や紅茶(奥)

 

「私は仕入れた商品の箱を開ける時、作った人たちがごはんを食べている姿を想像してうれしい気持ちになります。それがフェアトレードの特色。商品の向こうに必ず相手がいる。私がしていることはささいなことですが、途上国の人たちの笑顔につながっているかもと思うと楽しくなります」とほほ笑みます。

 

フェアトレードシティ 熊本市

 

 「フェアトレードタウン」は官民一体で運動を推進する都市で、各国の認定機関が審査。2020年11月時点で、世界中で2033都市が認定されています。昨年、市はフェアトレードタウン認定10周年を迎えました。明石さんは「正直、フェアトレードの浸透は、まだまだこれから。でも、これまでの活動を通じてフェアトレードの意識を持つ若い人たちがたくさん育ってきたことは大きな成果です」と現状を教えてくれました。毎年5月と11月に開催しているフェアトレード月間のイベントでは、県内外の学生が自主的に企画・運営スタッフとして参加。また、フェアトレードは学校教育にも取り入れられており、子どもたちが商品の背景を理解し、授業を通して『平等な世の中にしたい』などの目標を発表する姿も目にしたそうで、「これが認定から10年の成果。熊本には輝く子どもたちがいて、着実に前へと進んでいます」と目を輝かせます。

 

5月3日に開催されたフェアトレードに関する映画の試写会のスタッフと来場者。左から主催者の中村篤志さん、トークショーのゲストとして参加した明石祥子さん、社会問題に関心を持つイラストレーターTOMMY-ZAWA(トミザワ)さん、社会活動の記録に取り組むカメラマンの森田裕也さん、大学生の青野楓花さん、服に関わる社会問題の解決を目指す鬼塚悠輔さん

 

協力 : くまにちSDGsアクションプロジェクトアドバイザー澤克彦さん(EPO九州 九州地方環境パートナーシップオフィス)


ココがポイント!

 

熊本大学大学院 教育学研究科

教授   宮瀬 美津子さん

 

宮瀬教授の専門分野は家庭科教育で、SDGsに関連して、持続可能なライフスタイルについて研究している。NPO法人くまもと未来ネットの理事として、持続可能な地域社会づくりにも参加。

 

 

買い物で社会を変える!

 私たちが何を大切にして買うものを選ぶか。その選択が、社会や経済、環境を持続可能なものに変えていくためのキーポイントとなります。フェアトレード商品を選ぶことで、誰でも気軽に持続可能な社会の実現に貢献できるのです。

 フェアトレードをもっと私たちの生活に根付かせていくためには、その商品を取り扱うお店が増えることも重要です。私たちが日頃買い物をする近所の店に、ごく普通にフェアトレード商品が置いてある。そんな暮らしが実現するように、熊本から全国に向けてフェアトレードタウン活動が広がっていくことを期待しています。