「SDGs Quest みらい甲子園」は、全国の高校生たちがチームを組み、主体的にSDGsを探究し、持続可能な社会を実現するアイデアを競う大会です。初の熊本県大会の最終ステージが3月18日(土)、熊本市中央区の県立劇場で開催されました(共催/熊本日日新聞社)。受賞チームを紹介します。
熊本県大会には、県内10校から30チーム103人が参加しました。生徒たちはプレゼン資料を作成し、プラスチック製品や食品ロスの削減などのアイデアを提案。書類選考を経て12チームが事前の動画審査に進みました。
最終ステージでは、熊本日日新聞社常務取締役の山口和也実行委員が「高校生の皆さんが学校や家庭、地域の課題を自分事として捉えていることがうかがえ、うれしく思う」とあいさつ。
各チームが動画発表をした後、表彰式に移り、食品廃棄物で豚の飼育などに取り組む熊本農高が最優秀賞に輝きました。実行委員長を務めた熊本大大学院教育学研究科教授の宮瀬美津子氏は講評で「どの取り組みもすばらしく、若者の柔軟な発想力と行動力に驚いた。熊本から世界を変え、未来をつくるため、ぜひ来年度以降も多くの高校生にエントリーしてほしい」と期待を込めました。
近年、日本の飼料自給率の低さや飼料費の高騰が課題となっています。一方で、国内では膨大な量の食品を廃棄しているのが現状です。
私たちは地域の食品企業から集めた納豆や落花生、ノリ、米粉などの食品廃棄物で作る飼料「エコフィード」を開発。本校で飼育する豚に180日間与えたところ、市販飼料での飼育に比べ、1頭当たりの飼料費を2万2692円削減できた上、肉質・栄養価は向上しました。
研究成果の地域還元として、エコフィードの普及活動にも取り組んでいます。畜産農家と近隣企業をマッチングし、畜産農家の飼料費の削減や豚の発育の向上、企業の経費削減に貢献できました。
私たちの取り組みを全国へ発信し、各地の農業高校がエコフィードの開発・普及を行っていくことで、日本の飼料自給率の向上と食品廃棄量の削減につながることを期待できます。
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熊本県は全国6位の竹林面積を有し、全国有数のタケノコの生産地でもあります。しかしプラスチック製品の普及やタケノコの輸入量増加、担い手の高齢化などで放置竹林が増えています。放置竹林は土砂災害拡大の要因などにつながります。
私たちは竹の需要と竹林の価値を高めるための竹の活用法として①干しタケノコを用いた国産メンマの商品化②粉砕した竹の発酵肥料や馬・牛の寝床に敷く資材への利用、キクラゲの菌床栽培への活用③バイオ竹炭の製造と利用促進による農家の所得向上や脱炭素社会への貢献④竹チップを使って生ごみを分解する段ボールコンポストの開発を考えました。
段ボールコンポストの実証実験では1箱で1日500gのごみを分解。菊池市内2万世帯に普及できれば年間3000㌧もの生ごみを削減でき、年間2万5千本の竹の需要が増加します。
竹資源を活用し持続可能な地域社会を実現するために活動を続けていきます。
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私たちは、学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの「目に見えない障害」への理解が進まない現状を受け、障害のある子どもやその親の生きづらさを解消するワークショップを考えました。
一つは、喜怒哀楽などをイラストで表したカードを親子で作り、感情表現が苦手な子どもとのコミュニケーションを活発化させるワークショップです。障害の有無にかかわらず育児の難しさを感じている人も参加できます。親子の絆づくりや親同士のコミュニティー形成、親子を支援につなぐ機会にします。
もう一つは、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている人が、そのことを周囲に知らせる「ヘルプマーク」を、おしゃれで身に付けやすい缶バッジにアレンジする内容です。対象は中高生以上。当事者同士がデザインを話し合う過程で、孤独感や悩みを軽減する機会にもなります。
これらの制作を全国の就労支援施設に依頼し、ワークショップで販売する予定です。このアクションで生きづらい人に「一人じゃない」と伝えたいです。
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県内では日々、多くの食品が捨てられています。私たちは身近な食品ロスを少しでも削減するため、地元の企業から集めた紫イモやおから、リンゴ、バナナなどの廃棄食材を使ったパウンドケーキやクッキーの製作・販売を手掛けています。
活動を始めて3年目となる昨年は「誰一人取り残さない」SDGsの基本理念に、より貢献していこうとアレルゲンフリーのスイーツを考案。現在も、さまざまな企業の協力の下、あられやフィナンシェを開発中です。完成品は販売会で売り、売り上げの一部は寄付する予定です。
今後は校内だけでなく学外での販売会や常時販売も検討し、より多くの人がSDGsに関心を持ってくれればと願っています。また、昨年は、県生涯学習センターが開いている講座「くまもと県民カレッジ」での講演を通し、地域の人たちに食品ロスや私たちの取り組みについて知ってもらう機会もありました。これからもさまざまな人に食品ロスを身近に感じてもらい、自分にできる取り組みを考えるきっかけになるよう活動を続けていきます。
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微細なプラスチックごみによる海洋汚染は深刻な環境問題となっています。私たちは、ドイツの企業が開発したカカオの殻を原料とする食べられるスプーン「スプーニー」を用いた、脱プラスチック社会の実現に向けた取り組みを提案します。
具体的にはスマホ向け配送マップアプリを作成し、高校生のスマホにダウンロード。通学しながらアイスクリーム店にスプーニーを配送することで流通網を形成します。高校生はスプーニーの卸先となるアイスクリーム店のプロモーションも担当。アプリで在庫・配送状況を管理し、高校生が報酬を得られるシステムにするのが理想です。また、プラスチック製スプーンとの使用を比較できるイベントも実施し、スプーニーの普及を促進。高校生がビジネスを体験しながら、環境や地域経済にもプラスの効果をもたらすことを期待できます。
私たち高校生がたった一人でも行動することで世界を変えられる可能性があります。これからも現代社会の抱える問題と真摯(しんし)に向き合っていきたいです。
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私たちが提案するのは、水俣の豊富な森林資源を生かした給食配膳台の製作です。水俣市内では手入れが行き届いていない山林が増加。林業者らからは「山の現状や林業、木製品に関心を持ってほしい」という声が上がっています。
そこで私たちは、市内で唯一建築を学ぶ高校生として、行政や教育機関などを巻き込み、市民に山や林業へ興味を持ってもらえる活動をすることで山林の保護管理につなげたいと考えました。その一つが、給食配膳台を作る木育授業をプラン化して小学校に広めることです。実際に市内の湯出(ゆで)小学校の児童に給食配膳台の製作を指導し、木やものづくりに対する子どもたちの関心を高めました。
このアクションが広がることで地球温暖化対策はもちろん、林業への仕事の依頼や製材所といった地元企業の高校生の採用増加、建築産業の活性化につながればと願っています。