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生息地を守る環境保全団体 碧水ホタルの里(阿蘇市)

地道な活動地域の未来ともす 

 

 薄暗い中、足元を懐中電灯で照らした親子連れらの参加者は、光と音を嫌うというホタルの群れを見つけると小さな歓声を上げました。生息地を案内するのは阿蘇市黒川の住民グループ「碧水ホタルの里」(嶋村征司代表)。NPO法人「ASO田園空間博物館」とともにホタルの観賞ツアーを開催し、生息地を守る活動を続けています。それはSDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」や、ゴール15「陸の豊かさを守ろう」につながっています。 

 

 「碧水ホタルの里」は2009年4月、地元の有志8人で結成。「私が子どもの頃は家の中にまで入ってくるほどホタルがたくさん飛んでいました。それが農薬などの関係か、どんどん減ってきた。何とかホタルがすむ環境を取り戻したいと思い、活動を始めました」。嶋村代表(82)はそう話します。 

グループ名の「碧水」とは青く澄んだ水のこと。近くの神社にきれいな水が湧いていたことが由来で、統合されて阿蘇小となる前の小学校にもその名がついていました。 

 現在のメンバーは地区の退職者ら9人。地区を流れる用水路や小川の草刈りをしたり、ごみを拾ったりしてホタルがすむ環境を整えています。観賞ツアーの参加者が歩くコースの整備も大切な仕事です。 

 

ピンセットや虫眼鏡など観賞ツアーで使用する道具を点検する「碧水ホタルの里」のメンバー。ホタルは次第に増えてきたという。

 

繁殖は根気のいる作業 

 ホタルの繁殖にも力を注ぎます。5月に入ってホタルが光り始めると、まず成虫を捕まえ、ガーゼを張った一抱えほどの大きさのプラスチックの箱に放ちます。ガーゼが乾かないように1日に4、5回、霧吹きで水分を補給しながら産卵を待ちます。卵から幼虫がかえると、エサとなる巻貝のカワニナを与えます。1匹のホタルが成長するのに100匹のカワニナが必要といわれるそうで、根気のいる作業が続きます。 

 11月初旬にはホタルの幼虫の放流会も開催。近くの保育園の子どもたちと一緒に、紙コップに入れた幼虫を川に放ちます。そうした地道な活動の積み重ねが徐々に実を結び、ホタルは次第に増えてきているといいます。 

 

阿蘇市黒川の用水路で飛び交うホタル(2023年5月)

 

阿蘇の自然に触れる 

 10年以上前から始めたホタルの観賞ツアーは、シーズン中の金曜と土曜に5、6回開催。メンバーの案内で地区内の生息地を1時間ほどかけて歩きます(今年は既に終了)。海外や県外から阿蘇を訪れた観光客が参加するケースも多く、新型コロナウイルス禍の前は200人以上の参加者を数えたこともあったといいます。 

 「たくさんのホタルを見ることができて感動した」「とてもいい経験になった」「スタッフの方がとても丁寧に教えてくれた」「初めてホタルに触れることができた。素晴らしいツアーだった」。阿蘇の自然に触れ、幻想的に飛び交うホタルを目の当たりにした参加者からは、そんな感想が寄せられています。 

 「ホタルを育て、増やすという会の活動は、地域の環境維持につながり着実に成果を上げています。新しいメンバーも増やして活動を続けていきたい」。嶋村代表はそう話しています。 

 


ココがポイント!

地域で守る生物多様性 

 

くまにちSDGs アクションプロジェクト 

アドバイザー 

澤 克彦さん 

EPO九州

(九州地方環境 パートナーシップオフィス) 

 

 

 

 地域の豊かな自然環境を象徴する「ホタル」を通して、生き物同士のつながりと生き物を育む環境の大切さに注目することが大切です。 近年、環境保全活動においては、私たちの暮らしと生き物たちの関係を含めた「生物多様性の保全」という考え方が主流になっています。地域の外からむやみに生き物を持ってくることをしない「種のかく乱の防止」と、その土地で育まれた「種の保全」に努めることが第一歩です。  

 多様な生き物の恩恵を受ける私たち人間が生き物たちのつながりを守り、保全と活用を続けることが、持続的な地域の魅力を生み出します。