「くまにちSDGsアクションプロジェクト」では2022年から、SDGs推進に取り組む団体・グループなどを毎月紹介してきました。連載最終回の今回、熊本県内のSDGsの現状と今後の展望について、EPO九州コーディネーターの澤克彦さんと、くまもと未来ネット副代表の宮瀬美津子さんに聞きました。
|
自分の生活に合った情報選んで NPO法人くまもと未来ネット副代表 NPO法人くまもと未来ネット副代表。2024年3月末で熊本大大学院教育学研究科教授を定年退職。専門は家庭科教育。
関心持って持続可能な社会の支えに くまにちSDGsアクションプロジェクト 2004年、NPOの職員となり環境教育などの企画運営を担当。2007年からEPO九州のコーディネーターとして活動。 |
![]() |
NPO法人くまもと未来ネット副代表 NPO法人くまもと未来ネット副代表。2024年3月末で熊本大大学院教育学研究科教授を定年退職。専門は家庭科教育。
|
|
|
|
![]() |
くまにちSDGsアクションプロジェクト アドバイザー 2004年、NPOの職員となり環境教育などの企画運営を担当。2007年からEPO九州のコーディネーターとして活動。
|
-全国各地でSDGsへの取り組みが進む中、熊本県内のSDGsに関する取り組みの特徴とは。
宮瀬 豊かな自然が熊本の特徴の一つだと思っています。阿蘇の草原や、きれいな地下水など水資源を守るような取り組みは、SDGsという言葉がない頃から熊本の人々の中に根付いていました。環境保全はさまざまな人たちの協力が不可欠です。熊本では環境保全のためのつながりや連携が発展してきたところに、SDGsが結びついてさらにその取り組みが広がっていったように思います。
澤 本企画を通して、熊本で行われてきた取り組みをSDGsの観点で見つめ直しました。その結果、一つの課題だけではなく、複合的な課題に横断するような取り組みが数多くあることが確認できました。「SDGsはすでに暮らし根付いていた当たり前のもの」ということが、再発見できたのではないでしょうか。
-若い世代をこの持続可能な社会の担い手として育てていく上で、どのような環境を整えるべきでしょうか。
宮瀬 学校教育だけでなく、地域で次の世代を支える組織や団体が増えていくことが大事です。例えば「次世代のためにがんばろ会」(八代市)は発足当初、環境保全を中心にした活動をしていました。しかし途中から、次世代の育成にも力を入れ、今では高校生の環境保全団体「エコユースやつしろ」のサポートもしています。現在、高齢化して後継者がいないという問題に直面している団体もあります。次の世代の受け入れ体制を整えたり、活動が継続できるように行動したりすることも大事かなと思っています。

次世代のためにがんばろ会がエコユースやつしろと実施した「いきもの調査」=2025年6月、八代市(がんばろ会提供)
澤 若い世代が個性的に伸び伸びと活動できる環境をつくり、その活動がより広がりやすくすることが大切です。本企画では、県立矢部高校が地域と連携して林福連携に取り組んだり、「がんばろ会」が地元の高校生との関係を地域に根付かせる仕組みをつくったりしている様子を紹介しました。学校の中と外を行ったり来たりするような多様な支え方が、今後ますます重要になるのかなと思います。

林福連携の一環として認知症予防パズルを開発した、県立矢部高校林業科学科の生徒と米村龍一教諭(左)=2025年1月
-持続可能な社会をつくっていくために、熊本県で特に力を入れるべきことは。
宮瀬 半導体産業の発展に伴い、水資源の保全や汚染防止に対する県民の関心が高まっていると感じています。また「共生社会」も大事な視点の一つです。熊本では台湾などからの移住が増えており、「外国人が住みやすい地域づくり」を進めることが、共生社会の構築に強く結びつきます。人手不足が叫ばれる中で、女性の力がもっと発揮できるような社会にすることも必要です。
澤 問題意識を常に市民の目線で持ち続けることが求められています。現在、熊本は半導体関連企業の進出に伴い、経済だけでなく教育や多文化共生など、さまざまな分野に影響が起きています。また、ジェンダーの観点では、意図的に男女のバランスをとる意識が大切です。ジェンダーバランスに気を配る意識がなく、男性ばかりが集まっている場面もあるので、地道に取り組んでいく必要があると思います。
-今後の持続可能な地域づくりに向けて、私たちが日常生活で取り組めることはありますか
宮瀬 まずは県民が関心を持つことだと思います。例えば「フェアトレード」という言葉は知っていても、熊本がアジア初のフェアトレードタウンであることは知らない人が多いんですよね。まずは関心を持ち、少しでも行動に移すこと。無理なく取り組んでもらうことが大事だと思います。
澤 関心がない人に振り向いてもらうために、すでに関心がある人たちには発信者になってもらうことが大切です。良い体験をした人が自ら発信することで、熊本の良さがより際立つと思います。熊本は、探さなくても持続可能な社会につながる活動や自然と触れ合える環境が身近にあります。それは同時に、油断すると失われかねないものでもあります。誰かが何とかしてくれるのではなく、自分たちが関心を持つことが支えになると知っておく必要があります。
宮瀬 今、世の中には情報があふれています。さまざまな情報の中から、自分の生活に合うものを選ぶといいと思います。SDGsの視点からどんなものを選んだらいいのか、多様なライフスタイルが選べる時代になってきたからこそ、自分の意思をしっかり持つことも大事かなと思いますね。