SDGs朝刊特集 掲載記事アーカイブ

日本野鳥の会熊本県支部

野鳥観察通し、生物多様性を考える

 「いま飛んでいるのがカワラヒワです」「あの木のてっぺんにモズがいます」。望遠鏡をのぞき込んだ参加者が興味深そうに鳥の姿を見つめます。1月18日、日本野鳥の会熊本県支部(田中忠支部長)が熊本市の下江津湖周辺で開催した江津湖探鳥会(バードウオッチング)。県支部のメンバーが一般の参加者に、野鳥の種類や生態を詳しく説明していました。絶滅危惧種の保護や野鳥の生息地保全などに取り組む県支部の活動は、SDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」や14・15「海や陸の豊かさを守ろう」などに重なっています。

 

日本野鳥の会熊本県支部が熊本市の下江津湖周辺で開いた探鳥会。カラムクドリやニシオジロビタキといった珍しい鳥も見ることができた=1月18日

 この日の探鳥会には32人が参加。半数ほどが初心者だといいます。和やかな雰囲気の中、野鳥の姿を双眼鏡や望遠鏡で観察しました。「今回は44種類の鳥を見ることができ、その中にはたまたまカラムクドリやニシオジロビタキ(写真①)といった、かなり珍しい鳥もいました」と県支部の原口研治事務局長(72)=熊本市=は話します。

 

写真①ニシオジロビタキ(日本野鳥の会熊本県支部提供)

 

探鳥会、年60~70回

 県支部は1969年、野鳥の知識と愛護意識の普及を目的に「熊本野鳥の会」として発足。82年に現在の名称になりました。当初は60人ほどだった会員は昨年11月時点で352人。半世紀以上の歴史を持つ県内最大級の自然保護団体です。

 主な活動は、探鳥会と子ども向けのバードウオッチング指導、それに県内各地での巡回写真展の三つ。中でもメインは探鳥会で、熊本市の立田山や江津湖周辺、県北では荒尾干潟や蛇ケ谷公園、県南では球磨川河口や立神峡里地公園などで年間60~70回開催しており、参加者は1年で約1200人に上ります。

 「一般の方が探鳥会に参加することで、少しでも野鳥に興味を持ってもらえれば。それが生物多様性とは何か、なぜ大事かという理解につながると思う」と原口事務局長。

 小学校などからの要請を受け、子どもたちに野鳥の魅力を伝えるバードウオッチングも行っていて、年間で200人ほどが参加しています。先日は玉名市の横島干拓地で、横島小学校の児童がマナヅルやナベヅルの生態を学びました。また巡回写真展は、多くの人に野鳥への関心を持ってもらおうと、県支部会員の力作を展示しています。

 

調査活動にも協力

 さまざまな調査活動も続けています。環境省が2003年から始めた「モニタリングサイト1000」事業もその一つ。生物多様性の保全を目的に、全国に千カ所以上の調査サイトを設置。個体数の変化などの調査を100年以上にわたって続けるというものです。県支部は県内16カ所で野鳥の種類や数を調べています。その結果、スズメやツバメの個体数が減ってきていることが分かりました。原因としては、住宅の構造が変わって繁殖のための巣を作りにくくなったことや、餌不足などが考えられるそうです。

 環境省の絶滅危惧種に指定されているクロツラヘラサギ(写真②)の飛来数や生息状況の調査も毎年行っています。へらのようなくちばしを持つ渡り鳥で、一時は300羽程度まで減りましたが、今は世界で7千羽ほどが確認されており、そのうち200羽以上が緑川河口や菊池川河口など熊本で冬を越すといいます。

 

写真②クロツラヘラサギ(日本野鳥の会熊本県支部提供)

 

 こうした調査で得られた知識やデータは自治体の自然保護行政にも生かされていて、県支部は県環境影響評価審査会や熊本市の水前寺江津湖公園利活用・保全推進協議会、荒尾市の荒尾干潟保全・賢明利活用協議会などにも加わっています。

 「野鳥の中にはササゴイ(写真③)といって道具を使って魚を取るような珍しい種もいますが、あまり知られていません。野鳥を広く知ってもらうことが自然保護、環境保全につながっていくと思います」と原口事務局長は話しています。

 

写真③ササゴイ(日本野鳥の会熊本県支部提供)


ココがポイント!

観察は自然共生の第一歩

澤 克彦さん

くまにちSDGs アクションプロジェクト
アドバイザー
澤 克彦さん

EPO九州
九州地方環境 パートナーシップオフィス)

 季節や地域で生き物の種類や活動は変化します。最近は気候変動の影響により、渡り鳥や在来種の生息にも影響が出ています。
 誰もが気軽に参加できる野鳥の会県支部の活動は、身近な自然と親しむ最初の一歩といえます。活動を通して、自然と人が共に豊かになる「自然共生」や、失われつつある自然の営みを持続的に取り戻す「ネイチャーポジティブ」の考え方が広がることを期待します。