上天草の豊かな海で釣りを楽しむとともに、釣り場などに落ちているごみを拾って環境美化に貢献する-。「上天草市釣りを軸にしたブルーツーリズム推進委員会」(山下一美会長)が主催する上天草パールライン釣り大会は、釣りとごみ拾いを組み合わせた「おそらく日本初」(推進委)の大会です。釣り人とともに海を守ろうという推進委の活動は、SDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」や14「海の豊かさを守ろう」などにつながり、くまもとSDGsアワード2024未来づくり部門で入賞しました。
今年で4回目となる釣り大会は10月25日に開かれました。地元・上天草市をはじめ熊本市や福岡県大牟田市などから約60人が参加。釣った魚の種類や拾ったごみの重量でポイントを競いました。大会本部が置かれた上天草市松島観光海運会館には参加者らが続々と訪れ、キスやマダイ、クロダイ、モンゴウイカなどの釣果と、ペットボトルや廃タイヤなどの拾ったごみを持ち寄りました。ごみの総量は約580キロと過去最高でした。

参加者が拾ったごみの重さを計量するブルーツーリズム推進委員会のメンバー。総重量に応じて参加者にポイントが与えられる=上天草市松島町
今年は8月の豪雨で甚大な被害を受けた上天草市の復興を応援するため、参加費や協賛金は災害義援金として寄付。「大会が少しでも地域の皆さんの手助けになれば」と山下会長(52)=同市=は話します。
推進委が発足したのは2021年2月。その前年、上天草市は交流人口拡大や地域経済活性化につなげようと釣りを軸にして海に親しんでもらう「ブルーツーリズム促進プロジェクト」を始めました。市の呼び掛けに応えて集まった釣り愛好者らが推進委の中心メンバーとなりました。
釣り人の中には使った針や弁当くずなどのごみを捨てて帰るマナーの悪い人もいて、地元からは「海を汚して帰るから釣り人には来てほしくない」という声が上がっていました。「そんな地域のごみ問題を解決しながら、釣りで上天草を盛り上げたいという思いで集まったのが推進委のメンバーです」と山下会長。
現在の会員は26人。遊漁船の船長である山下会長をはじめ、釣り具店の店長など釣りのプロや釣りを趣味にしている人たちです。「以前はごみ問題のために釣り人が地元から嫌われていましたが、次第にマナーは良くなっていると思います。釣り針などが捨ててあるケースは少なく、漂流ごみが増えている印象です」と推進委副会長の國武雅也さん(45)=熊本市。
釣り大会とごみ拾いを組み合わせた試みは、ほかの地域でも始まっているといいます。「釣りを通じて豊かな人生を送る人を増やすためにも、こうした取り組みを全国に広げていきたいですね」と上天草市企画政策部の飯野亮さん(39)。海を守りながら釣りが持続できる環境をつくりたい、という思いが伝わってきました。
推進委は釣り大会のほかに、年に1回の親子釣り教室も開いています。さらに、昨年から始めたのが「海のゆりかご」と呼ばれる海草の一種アマモ場の造成です。
アマモは小魚やカニ、エビなどのすみかや産卵場所となるほか、光合成で二酸化炭素を吸収し酸素をつくるなど海の生態系を支える存在です。しかし、海水温の上昇や水質汚染によって生息場所が減りつつあるといいます。
推進委はアマモ場を造成するために天然のアマモから種子を採取し、昨年暮れ、海底に設置しました。砂の質や潮流などアマモが育つ条件は難しいといいますが、「専門家に相談しながら海の再生につなげていきたい」と飯野さん。
今後の活動について山下会長は「地域と協力しながら長く続けることで、地域を盛り上げて上天草が釣り人の聖地になれば」と話しています。

種子が含まれているアマモの「花肢」を採取するブルーツーリズム推進委員会のメンバーら=昨年6月、上天草市松島町の樋合海水浴場(同委員会提供)

アマモの種子を選別するブルーツーリズム推進委のメンバーら(昨年8月、同委員会提供)

くまにちSDGs アクションプロジェクト
アドバイザー
澤 克彦さん
EPO九州
(九州地方環境 パートナーシップオフィス)
上天草パールライン釣り大会は、釣り人が楽しみながらごみ拾いに取り組める大会にすることで、地域の観光・経済に寄与するだけでなく、環境課題の解決にもつながるブルーツーリズムのモデルとなっています。また、事業者と釣り人が協働的に取り組むことで、SDGsゴール12「つくる責任・つかう責任」につながります。自然の損失を止め、回復させていく「ネイチャーポジティブ」の実践としても注目されます。