SDGs朝刊特集 掲載記事アーカイブ

くまもとSDGsミライパーク

教育テーマパーク、多彩な体験提供

 今年4月、阿蘇くまもと空港(益城町)の東側のエリアに、金融機関が運営する施設としては日本初の企業連携型SDGs教育専門施設「くまもとSDGsミライパーク」がオープンしました。この施設は、肥後銀行が創立100周年を記念して開設し、未来を担う子どもたちや地域社会に向けて、SDGsを題材とした体験型の学びを提供しています。

 ミライパークは、阿蘇くまもと空港旅客ターミナル東側の「そらよかビジターセンター」内に整備されました。広さは約1400平方メートル。もともと空港ビルを建て替える際の仮設ターミナルだった建物です。建物の内部には当時の空港表示板をあえて残すなど、本来は捨てられるはずだったものに新たな価値を与えて再生する「アップサイクル」を意識したつくりが特徴です。

 

県内外の企業10社が出展する企業展示エリア。各社の取り組みについて、実物や模型を見ながら学ぶことができる(肥後銀行提供)

 

3Rの理念を大切に

 建物を再利用しただけでなく、机やいすも廃校となった山鹿市の小中学校から寄贈されたもの。ミライパークは3R(リデュース=ごみを減らす、リユース=繰り返し使う、リサイクル=再利用する)の理念でつくられています。「地域の未来を担う子どもたちや国内外からの来訪者に向けて、地方都市である熊本からSDGsを普及啓発する、常設の教育拠点をつくりたいという思いからプロジェクトを始動しました」と同銀行地方創生室の高島英寿室長。
 ミライパークは、大きく三つのエリアで構成されています。一つ目は「企業展示エリア」。世界で活躍する多様な企業による、最先端のSDGsの取り組みを紹介するエリアで、県内外の企業10社のブースを設置しています。台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場を運営するJASMは工場内の水処理工程をパネルや模型で展示し、平田機工は省電力モーターによるベルトコンベヤーを模型で紹介しています。また、ハイコムグループが新規事業として始めた人工光の工場で葉物野菜などを栽培するスマートファーム事業の展示も目を引きます。
 二つ目は「ワークショップエリア」です。ここでは、県内外から修学旅行や社会科見学で熊本を訪れる小中学生を中心に、「SDGsの実行」「キャリア探究」などが学べる体験型プログラムを実施しています。ワークショップでは最初にSDGsについての講義があり、各企業の取り組みを見学。どんなところに興味を持ったのか、今後どういう行動につなげていくかを話し合います。講師を務めるミライパークの佐藤香織館長は「ここだけで終わらないために、子どもたちが学校に持ち帰ってどこを深く掘り下げていくかを考えてもらうようにしています」と話します。対象は小学4年生以上ですが、企業の研修で使われるケースもあり、幅広い層に向けたプログラムを展開しています。
 三つ目は「SDGsショップエリア」です。SDGsの理念に基づいて開発された商品のみを取り扱っており、SDGsを身近に感じることができます。

 

SDGsについて考えるワークショップで学ぶ子どもたち(肥後銀行提供)

 

「キャリア探究」へ

 SDGsを「知る」段階から「実行」、そして「キャリア探究」へと軸を移していくのがミライパークの狙いだといいます。「キャリアと言っても職業選択だけではなく、自分たちの行動が未来をつくると自覚すること。SDGsは子どもたちにとって必要な価値観だと思います」と佐藤館長。「ワークショップだけでなく、ミライパークをいろんな学校の発表の場として使ってほしい。うちはこんなことをやっていますとどんどんアピールして、情報交換の場にしてもらいたいですね」と話しています。

 

ワークショップで話す館長の佐藤香織さん(肥後銀行提供)


ココがポイント!

企業と共に学びを深める

 

くまにちSDGs アクションプロジェクト

アドバイザー 澤 克彦さん

EPO九州

(九州地方環境パートナーシップオフィス)

  

 

 

 

 SDGsの達成に向けた若者たちのキャリア形成・意識づくりのため、企業の取り組みと連携はますます重要になっています。ミライパークでは、地域経済・産業基盤の担い手である企業や金融が持つSDGs推進のノウハウや視点を知ることができます。ここでの学びは2030年以降の地域社会の担い手育成につながります。今後、企業の「つくる責任」を多様に担う場として、同施設の活用が期待されます。