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国際協力団体 れんげ国際ボランティア会(玉名市)

途上国・被災地で支援の輪 

 厳しい環境に直面している途上国の人々に寄り添い、手を差し伸べる─。玉名市の認定NPO法人「れんげ国際ボランティア会」(川原英照会長、英語名の略称ARTIC)は、45年もの長きにわたって支援活動を続けています。熊本を代表する国際協力団体であるARTICの活動は、SDGsのゴール10「人や国の不平等をなくそう」をはじめ、ゴール16「平和と公正をすべての人に」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」などにつながっています。 

 同会の母体となる蓮華院誕生寺(同市築地)が途上国への支援活動を始めたのは1980年。カンボジア内戦によって大勢の国民が国外に逃れ、タイなどに難民キャンプが作られました。そんな難民を支援しようと学用品や楽器などを贈ったのがきっかけでした。「食料支援は国連が担当するので教育面をやろうと、日本で集めた絵本にカンボジア語の訳文をつけたり、図書館を造ったりしました。その背景には仏教の『利他の精神』が理念としてあります」とARTIC事務局長の久家誠司さん(67)。 

 

多岐にわたる活動 

 その後、ARTICの活動はタイやスリランカ、チベット、ミャンマー、インドなどへと広がりました。支援の内容は学校建設や教員養成、人材育成などの教育面が中心ですが、上下水道やトイレの整備といった衛生面も手掛けるなど多岐にわたります。 

 例えばミャンマーでは、2012年から準備を始め、翌年、学校建設に着手。23年末までに累計116校の校舎を建てました。子どもの教育の質を高めるためには教員を育てる必要があることから、千人以上の教員養成にも携わりました。 

 また、インドで暮らすチベット難民への支援は20年以上の歴史があります。現地NGO(非政府組織)と協力して、生活用水確保のために貯水タンクの設置や水道管の敷設などに取り組んでいます。さらに、アイデンティティー保持のために、チベット語の絵本や一般図書を毎年3千冊作成して難民に届けています。インドではまだ屋外排せつの習慣が残っており、防犯の意味からも公衆トイレの新設や改修にも力を入れます。こうした活動の費用は国の助成金などで賄っています。 

 

れんげ国際ボランティア会 の画像

インドのチベット難民キャンプで、れんげ国際ボランティア会が整備した水道に喜ぶ難民たち。これまではバケツを下げ30分近くかけて水くみをしていた。右端は久家事務局長=2020年(れんげ国際ボランティア会提供)

 

日本のファンを作る 

 海外だけではありません。国内でも阪神大震災や東日本大震災、熊本地震など災害が起きたときは被災地へ飛んで、現地で支援活動を続けています。昨年の能登半島地震でも輪島市の避難所で夕食の炊き出しを行い、被災者から喜ばれました。 

 そうした実績にもかかわらず、海外支援のイメージが強いからか、「外国を助けている場合ではない。まずは国内のことから」という声もあるといいます。それに対して久家事務局長は「今の時代、一国平和主義はあり得ません」と反論します。「これだけグローバル化が進むと、途上国の問題は巡り巡って自分たちに返ってきます。物心両面で支援することで、一人でも多く日本のファンを作るのが私たちの使命です」 

 ARTICの一番の哲学は「自助なきところに支援なし」だといいます。途上国の人たちが自分たちで生きる力をつけるまで、「お助けマン」としての地道な活動は続きます。 

 ※ARTICは活動への参加や支援(寄付)を募集しています。詳しくはホームページ参照。 

 

能登半島地震支援への出発式の画像

能登半島地震支援への出発式。輪島市で炊き出しを10日間行った =2024年2月

 


ココがポイント!

当事者意識を持つことが重要

 

 

熊本県立大学特任教授 

熊本県庁国際政策相談役 

 

遠藤 浩昭さん 

 

 

 

 地球規模の課題を解決するためには、多くの人が当事者意識を持ち、主体的に行動することが重要です。ARTICがさまざまな国で一貫して取り組んでいるのは、その意識を地域全体に根付かせ、継続的な行動へとつなげること。多くの関係者を巻き込み、自ら行動することで、地域の気づきと変化を促し、外部の支援だけに頼らない自助と自立を後押ししています。こうした意識が広がることで、地域全体、さらには地球全体の持続可能性(サステナビリティ)が高まるはずです。 

 世界を「ジブンゴト」として捉え身近な地域から行動することが求められています。