SDGs朝刊特集 掲載記事アーカイブ

第1回 熊本県弁護士会

SDGs×法律

企業・団体・地域をつなぐプロジェクトチーム始動

県内の弁護士283人(2021年4月1日現在)と弁護士法人が所属している熊本県弁護士会は21年4月、新たに「SDGsプロジェクトチーム」を発足させ、来年度の本格的な活動に向けて動き始めました。
「なぜ弁護士会でSDGs推進に取り組むのか」「どんなことを目指しているのか」立ち上げに至った思いと、活動について紹介します。


弁護士会が目指す方向性と一致するSDGsの理念

 20年4月に開催された「公害対策・環境保全委員会」で、委員の1人が「SDGsの理念は弁護士会が日頃、目標としている方向性と一致するので、会としてもSDGsに関する活動に積極的に取り組むべきだ」と提案。それがきっかけとなり、その年の10月と11月、会員向けのSDGs研修会を2度開催しました。「そこでSDGsが環境問題にとどまらず、さまざまな社会問題を対象にしていることを学び、会を挙げた活動にしなければならないと考えました」と会長の原彰宏さん(49)は発足の経緯を振り返ります。

 SDGsがあらゆる社会問題を対象とすることから、公害対策・環境保全委員会、消費者問題対策委員会、子どもの人権委員会、両性の平等に関する委員会、高齢者・障害者に関する委員会、人権擁護委員会、災害対策委員会、対外広報プロジェクトチームなど、すでにある委員会・チームに所属している会員からプロジェクトチームの18人が選ばれました。原会長も加わり、それぞれの委員会の枠を超えた活動を始めています。

従来の活動をSDGsの視点で分かりやすく、親しみやすく

 「これまで取り組んできた、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するための、弁護士会の活動を、SDGsの考え方で改めて整理し、情報を発信していきたい」とSDGsプロジェクトチーム座長の矢澤利典さん(47)は話します。

熊本県弁護士会会長の原彰宏さん(右)、SDGsプロジェクトチーム座長の矢澤利典さん

 地方創生SDGs官民連携プラットフォーム(内閣府主催)への加入(8月)や、熊本県SDGs登録制度への申請(10月)など、現在の活動は発足後の基礎固めの段階だそうです。

SDGsの周りには、労働法や環境法などいろいろな法律が存在しています。「法律の専門家の視点から、SDGsに取り組む企業とのつながりを構築し、活動を支援したり、企業同士をつなぐコーディネーター的な役割も担ったりしていきたい」と話す矢澤さん。

 「SDGsの目標達成までの期限が10年を切っている状況で、まだ十分にその考え方が浸透していないと感じています。県民にSDGsのこと、当会のことを知っていただけるよう活動していきたい」と抱負を語ってくれました。来年度にはSDGsをテーマとしたシンポジウムの開催を予定しています。

 「例えば地域や学校などで当会に講演してほしいなどのご要望がございましたら、ぜひお問い合わせください。大歓迎です。消費者教育や法教育などにも取り組んでいます」と会長の原さんは笑顔で答えてくれました。

熊本県弁護士会
https://kumaben.or.jp/ Tel 096(325)0913(受付時間:9時~17時30分)


ココがポイント!

法と平等の理念はSDGs達成の根幹に

EPO九州(九州地方環境パートナーシップオフィス) コーディネーター 澤 克彦さん

 弁護士会と聞くと、SDGsの17のゴールの中でも16「平和と公正をすべての人に」に着目しがちですが、SDGsを読み解いていくと「法へのアクセス」「平等な機会」といった考え方や表現が、目指す目標の中に多く見られます。つまり、私たちの豊かな暮らしを、「法律」「倫理」といった社会の基盤として温かく守っているとも言えます。弁護士会の皆さんのSDGs達成に向けたプロジェクトチームの活動や、県民や企業の頼りとなる相談活動の充実にますます期待が高まります。

※EPO九州は環境省が全国8ブロックに設置した「環境パートナーシップオフィス」の一つ。環境やSDGsにかかわる情報発信やワークショップなども行う。 https://epo-kyushu.jp/