互いに学び、支え 持続可能な社会へ
本連載では、4回にわたり県内でSDGsに取り組む人や団体を紹介してきました。
連載最終回を迎え、熊本日日新聞社は2月18日、これまでポイント解説者として登場いただいた4人に、九州地方環境事務所の泉勇気さんを加えて座談会を開催。
県内のSDGsのキーパーソンともいえる5人に、取り組みをさらに加速させるためには何が必要かを聞きました。
SDGsの17の目標はスケールが大きく、個人にできることを考えるのは難しい。地球規模の課題を「ジブンゴト」にすることが大事です。
例えば、普段の食事の食べ残しの改善に取り組むことで、世界の飢餓や貧困問題を考えることができます。そこから今どんな行動が求められているかが見えてくるはずです。
また、取り組みを「見える化」することも重要です。「地域社会のため何かしたい」という人が現れます。キーワードは「ボランティア」という考え方。他者を必要として、他者に必要とされる相互行為を積み重ねていくことです。社会の中で、誰もがお互いに「We need you」と言える市民社会を作っていくことで、一人一人が活躍できるSDGsの実現に近づくと思います。
私が考えるキーワードは「参加から参画へ。協働。仲間づくり」です。子どもたちは柔軟な発想を持っており、大人が思いつかないような素晴らしいアイデアを出すことが多々あります。その時に、大人と子どもが上下関係ではなく、フラットな関係になって、子どもたちのアイデアを実現できるように大人が手助けする、いわゆる「協働」の場面がこれから増えていくことを期待します。
また、教育においてはESD(持続可能な開発のための教育)の推進も求められています。それは、まさに未来を担う人づくりです。その実現のためにも「参加から参画へ。協働。仲間づくり」は大切なキーワードになるはずです。
ポイントは「教育の中で、どのように取り扱い、どのように学んでいくか」。「教育」というと子どもを対象と思いがちですが、家庭・学校・社会などあらゆるところで行われる活動のことです。それぞれの立場でSDGsについて学び、自分にできることを考える必要があります。大人も子どももみんなで共に学び続けていくことも大切です。
しかし、学ぼうと思っても、身近な範囲だけになってしまいがち。そこで必要なのが「SDGsをキーワードとした出会いの場づくり」。私たちはこれまでにワークショップなどを開催し、多様な方に参加いただきました。出会いの場の創出が気付きを増やすことにつながっていると感じています。
2020年10月、政府は50年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言しました。実現のためには全ての地域と人が取り組んでいく必要があり、そのためにはSDGsの考え方をローカライズ(地域化)し、一つ一つの地域、一社一社、一人一人の活動と暮らしに落とし込んでいくことが重要です。
とはいえ、それぞれが抱える実情は異なり、いろいろな要素を考慮する必要もあると思います。そのときに重要になるのが横連携です。環境省など国の機関同士で横連携していくことで、自治体内、組織同士、プラットフォーム同士が接続しやすくなり、課題や問題解決を共有していけると考えます。
人と人、組織同士の連携の仕方といったネットワークの持ち方も変えていく必要があります。例えるなら物事を有線のLANケーブルで1対1やハブを使って集約的につなぐのではなく「Wi‐Fi的・クラウド的」に縦横無尽につなぐイメージです。SDGsのような多様な課題に対しては、一つずつつなぐのではなく、多様な主体が幅広い視野とフィールドで課題を空間的に捉えることが必要だと感じています。
また課題に対する向き合い方も上意下達からクラウド的に横と斜めの関係で共有し相互参照する関係へとシフトしていくことが望まれます。個人や組織の枠にとらわれず、時代を先取りする動き方に変化していくことが期待されます。
熊本日日新聞社で開催した座談会の様子
講師の加藤シゲキさん
熊本日日新聞社は2月24日、「くまにちSDGsアクションプロジェクト」の協賛企業や団体を対象に、SDGs達成のための知識やノウハウを共有し目標達成に向けた人材を育成するオンラインセミナーを開催しました。「SDGsから見える10年後の会社の未来」をテーマにシンワラボ株式会社の加藤シゲキ代表取締役が、社員が主体的にSDGs活動に参加するための会社づくりのノウハウを、各社の事例を交えながら説明しました。